別居は離婚をするために重要?夫婦が別居する理由や注意点などを解説

  • 作成日

    作成日

    2023/08/10

  • 更新日

    更新日

    2023/08/10

  • アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

目次

離婚前に一定期間別居しなければ離婚は認められないというルールのある国もありますが、日本では、離婚するために別居は必須のルールとはなっていません。
別居を経て離婚する方もいれば、別居せずに離婚する方もいます。

今回は、離婚をするために別居を検討している方向けに、別居する理由や注意点などを解説します。

別居とは?家庭内別居との違い

別居の法的な問題や別居と家庭内別居との違いについて解説します。

(1)別居とは夫婦が別々の家で生活すること

民法上、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない(民法第752条)」と定められています。
この同居しなければならないとされている部分を、夫婦の同居義務といいます。
別居するということは、夫婦が別々の家で生活することになるため、法律上、この同居義務に抵触することになります。

しかし、別居に至るまでにはさまざまな理由があるはずです。
そのため、正当な理由がある別居の場合は、別居しても別居義務違反にはならないと考えられています。

正当な理由としては、仕事による単身赴任、子どもの学校のために夫婦が別に暮らす、夫婦仲は破綻しており離婚の話や離婚調停を行っている、夫婦の一時的な喧嘩から頭を冷やす必要性がある、相手がDVをする等が挙げられます。

(2)家庭内別居とは夫婦関係が破綻しているのに同居を続けていること

家庭内別居とは、夫婦が同じ家に住んでいるのにも関わらず顔を合わせたり、会話をしたりすることがない状態をいいます。
夫婦としての実質的な関係は破綻しているが、何らかの理由で別居および離婚をせずに同居していることが多いようです。

離婚ではなく別居を選ぶ理由

夫婦関係に問題を抱えたとき、すぐに離婚することなく別居を選ぶ目的は、大きく二つあります。
一つは、夫婦関係の修復です。具体的には、次のような理由で別居を選択する方がいます。
  • 相手の顔を見てしまうと感情的になってしまい冷静に話合いができない
  • 相手と話す前に、自分の気持ちについて静かに考えたい
  • 離婚すべきなのだと思うが、できれば離婚したくない
  • 話し合う前に、別居してお互いに冷静になるべき
  • 別居の事態に相手方が反省し、歩み寄ってくることがある など

離婚するために別居を選ぶこともある

別居を選ぶもう一つの目的は、将来的に離婚することです。

離婚といっても、夫婦で築き上げてきた生活を清算するためには、話し合うべき事柄が多い場合もあり、実際の話合いには時間や労力もかかります。
夫婦関係がすでに破綻しているのに、話合いが終了するまで一緒に生活しなければならないとしたら、双方が受けるストレスは大きくなりますので、別居を選択するのです。

また、一方が無職である場合には、離婚後は基本的に自立して生活しなければなりませんので、仕事を探す時間も必要です。
結婚していれば別居中も相手方に生活費を請求できますので、生活費を受け取りながら自立のための準備をすることができます。

このように、さまざまな理由で将来離婚するために別居を選択する方がいます。そして、離婚するために事前に別居をすることは、次のようなメリットがあります。

(1)別居することで冷静に離婚の話合いを進められる

離婚を前提に双方同意のもと別居をすれば、お互いに「夫婦関係は破綻した」という認識のもと、離婚に向けて冷静に話合いをすることができます。
離婚後の生活をイメージしながら、離婚の準備をすることもできるでしょう。

ただし、話合いをしても、親権や養育費などの離婚条件に折り合いがつかず、調停や訴訟が必要になることがあります。訴訟で裁判所に離婚を認めてもらうためには、法定の離婚原因が必要です。ただ、明確な離婚原因が認められない場合でも、裁判所関与のもと、和解で離婚が成立することもあります。

(2)別居期間が長期であれば離婚が認められる場合がある

離婚訴訟では、不貞行為などの明確な法定の離婚原因がない場合でも、別居が長期間にわたって夫婦の実質が失われており、夫婦関係が破綻している状態であれば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(民法第770条1項5号)」があるとして離婚が認められる場合があります。

また、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められませんが、別居期間が長期におよぶ場合など一定の条件を満たす場合には、離婚が認められる可能性があります。

別居期間が長期かどうかは、当事者の年齢、同居期間、別居の理由などを考慮して判断されますので、一概に「何年以上必要」ということはできません。しかし、同居期間が10年以上のケースでは、2~3年程度の別居では不十分といえそうです。

別居は必ずしも正しい判断とは言い切れない

一方で、別居にはデメリットもあり、後々「するべきではなかった」と後悔してしまうケースもあります。

(1)気持ちが離れてしまう可能性

夫婦関係の修復を希望している場合、別居することで夫婦の気持ちが冷めてしまい、関係を修復できなくなることがあります。

また、離婚は希望しないが気持ちを整理して冷静になるために別居したのに、相手の気持ちが離婚に傾き、離婚を請求されることもあります。

(2)一方的な別居は「同居義務違反」になる場合も

一方的な別居は、正当な理由のない同居義務違反として、法定の離婚原因の一つである「悪意の遺棄(民法第770条1項2号)」に該当する可能性があります。

悪意の遺棄とは、夫婦の共同生活を積極的に断とうという積極的な意図を有し、夫婦の同居義務など(民法第752条)を果たさないことをいいます。

具体的には、夫婦の一方が配偶者や子どもを捨てて一方的に別居をして生活費を送らなかったり、相手方が別居をせざるを得ないように仕向けたりすることをいいます。

別居が、「悪意の遺棄」とされると、離婚を希望する自分にとって不利な事態が生じるおそれがあります。

たとえば、離婚目的で一方的に別居し、生活費も渡さず連絡も断ったような場合、婚姻関係が破綻した原因は悪意の遺棄を行った自分にあるとされるおそれがあります。
そうなってしまうと、裁判所は、婚姻関係破綻の責任がある「有責配偶者」からの離婚請求については、原則として離婚を認めません。
ただし、例外的に次の条件がある場合にのみ離婚が認められます。
  • 未成熟の子(経済的社会的に自立していない子)がいない
  • 別居期間が同居期間と比べ長い
  • 配偶者が離婚により極めて残酷な状況に置かれるような事情がない
別居後に同居義務違反や悪意の遺棄と主張されないためにも、別居の際には、事前に別居の意思があることや別居の理由(離婚を希望するのか夫婦関係の修復を希望するのか)について、相手方に伝えておくとよいでしょう。

別居中の生活費や子どもの教育費について

別居中も、夫婦はお互いに協力して扶養し合う義務があります。具体的には、収入の高い方が、低い方の生活費や子どもの教育費などを負担して扶養しなければなりません。
この生活費や教育費などのことを、法律上「婚姻費用」といいます。

別居するにあたっては、お金の準備も必要ですから、婚姻費用について話し合う必要があります。
婚姻費用は、話合いで決めることができますが、裁判所が収入額と子の人数・年齢に応じた妥当な婚姻費用を公表していますので、この算定表を参考に話し合うとよいでしょう。
夫婦で婚姻費用の額について話合いができない場合には、家庭裁判所に対して婚姻費用分担請求の調停を申し立てて、調停の場で話し合うこともできます。

別居するまでの流れや準備について

別居するにあたっては、さまざまな準備が必要です。別居するまでの流れや、事前にしておいた方がよい準備について説明します。

(1)自分が出ていく場合は住居を確保する

自分が家を出る場合は、別居中に生活する家を見つけなければならなりません。

実家に帰省できる人は、実家を別居先とすることが多いようです。頼れる方がいる場合には、事前に協力を頼むとよいでしょう。
実家などを頼れない場合は、自分で賃貸アパートなど契約をして住居を確保する必要がありますので、初めに一定のお金が必要となります。

(2)貴重品や生活用品をまとめて引っ越しの準備をする

自分の貴重品や生活に必要なものをまとめて、引っ越しの準備をします。
夫婦が同居中に協力して形成した共有財産は、通常相手方に2分の1の権利があります。勝手に持ち出すことはトラブルの原因となりますので、避けたほうがよいでしょう。

具体的には、相手方名義の口座から預金を下ろして持ち出す、共同生活で利用していた家具・家財などを持ち出す行為などが問題となります。

また、勝手に持ち出したからといって、すべてが自分のものになるわけではありません。
実務では、最終的な財産分与額を決定する際に、持ち出された財産分を含めて清算しますので、勝手に持ち出しても金銭的に得することはありません。
逆に、相手方が「財産を勝手に持ち出された!」と感情的になり、離婚の話合いがスムーズに進まなかったり、婚姻費用の支払いに応じなかったりすることがありますので、注意しましょう。

(3)子どもがいる場合は養育環境を整える

子どもを連れて別居する場合(※)には、保育園や幼稚園、学校などに変更が必要かどうかを確認し、変更が必要であればその手続も済ませておく必要があります。

離婚を前提とした別居では、離婚後の生活を見越して養育環境を整える必要がありますので、別居と共に住民票を移転することも検討しましょう。
住民票を移して学区が変わっても、子どもの環境を維持するために元の学校に通うことも可能なケースもありますので、役所の担当窓口に相談してみるとよいでしょう。

また、児童手当は、父母のうち収入の高い方に支給されますが、離婚協議中という理由で別居している場合には、児童と同居している親に支給されます。
児童手当を直接受領できるという点でも、住民票を移動するメリットがあります。
なお、前提として、離婚協議中であることがわかる資料が必要となりますので、具体的にどのような資料が必要なのか、役所の担当窓口に問い合わせるようにしましょう。

※子ども連れの別居に配偶者の同意がない場合、子どもを連れて別居することは、虐待など正当な理由がない限り、後でトラブルが生じるおそれがあります。一方で、子どもを置いて別居してしまうと、子どもを実際に世話していない期間が生じますので、離婚時に親権者をどちらにするかの判断で不利な考慮要素となります。最終的にどうするかは、自分で決断する必要があります。

(4)夫婦の所有財産について把握しておくことも大切

財産分与の対象は、原則として別居時の共有財産です。
例外的に、公平の観点から、別居後に各自が形成した財産が財産分与で考慮されることもありますが、基本的には別居時が基準となります。

したがって、離婚を前提に別居する場合には、共有財産を正確に把握するために、別居前に共有財産についての資料を入手しておくことも大切になります。

具体的には、相手方個人名義の通帳の表紙と、最新情報を記帳したうえで残高部分のコピー(写真)、有価証券の保有情報がわかる資料、不動産登記事項証明書、保険証書、車両についての資料(ナンバー、売買契約書など)があれば、のちの財産分与の話合いに役立ちます。

【まとめ】別居に悩んだらまずは深呼吸!お困りの方は弁護士に相談を

夫婦仲に問題が生じても、離婚したくないという場合には、別居するかどうかは慎重に検討するようにしましょう。
別居することで、夫婦それぞれが冷静に考えて自分を見直し、夫婦関係が修復する可能性ももちろんありますが、双方または一方の心が離れてしまい、離婚を請求する・されることになる可能性もあります。

夫婦の関係修復または離婚のどちらの目的で別居するにしても、DV被害にあっているなど例外的な場合を除いて、一方的な事前通知のない突然の別居は避け、相手方の同意を得るか、少なくとも別居の意思とその理由を伝えたうえで別居した方がよいでしょう。

今回の記事では、離婚前の別居についてご説明しました。

離婚前に別居をするかを検討するにあたって、「夫婦関係をこれからどうしていきたいのか」について悩み、別居を経て「離婚」を決意される方もいらっしゃいます。

アディーレ法律事務所では、離婚問題のご相談を承っております(※)。
(※具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。)
離婚でお悩みの方は、離婚問題を積極的に取り扱っているアディーレ法律事務所にご相談ください。

離婚に関するご相談は
アディーレへ!

アディーレ法律事務所のチャンネル

この記事の監修弁護士

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

林 頼信の顔写真
  • 本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

こんな記事も読まれています

FREE 0120-818-121 朝9時~夜10時・土日祝日も受付中