交通事故の示談解決まで長引くケースと弁護士に依頼するメリットについて

  • 作成日

    作成日

    2023/08/17

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    2023/08/17

  • アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

目次

交通事故の示談解決まで長引くケースと弁護士に依頼するメリットについて
『交通事故の被害にあい、加害者の保険会社から示談を提案された』

今、まさにそのような状況の方はいらっしゃいますか。
ご自身の契約する保険会社が示談の代行ができない場合などは、ご自身で加害者と示談交渉をしなければいけません。
加害者と示談をするとはいっても、どのように進めれば良いのか、どのくらいの時間がかかるのかよく分からなくて不安だという方もいらっしゃるかと思います。

交通事故の示談にかかる時間は、個別の事案によって異なりますので一概には言えませんが、話し合いがまとまらず、交渉が難航する場合は1年以上かかる可能性もあります。

ただし、加害者の提示する金額をそのまま承諾しないようにしてください。
特に、後遺障害が残るようなけがをされた場合には、交渉を弁護士に依頼することによって最終的に支払われる賠償金が増額される可能性があります。
今回の記事では、
  • 交通事故の加害者に請求できる損害賠償項目
  • 示談交渉の当事者
  • 解決まで長引くケースの解説
  • 弁護士に依頼するメリット
についてご説明します。

『示談』とは?

そもそも「示談」って何ですか?

「示談」とは、交通事故による損害賠償の問題を、加害者と被害者の当事者の話し合いで解決することです。

交通事故の示談では、交通事故で生じた全ての損害について、その賠償金額などを決めなければいけません。
交通事故の被害にあった時に発生する損害は、主に次のとおりです。
積極侵害
消極侵害
慰謝料
その他、交通事故によって車両や所持品が破損したという場合には「物損」についても損害賠償請求ができます。
これら全ての損害について当事者が話合いで解決することが示談です。

示談交渉は誰がする?

車両による交通事故の場合、加害者・被害者双方に過失があるような場合には、被害者側の保険会社と加害者側の保険会社の担当者同士で示談の話合いをすることが多いです。
示談交渉
具体的に、どのような場合に誰が示談交渉にあたるのかご説明します。
加害者について
加害者が自賠責保険に加えて任意保険の契約をしている場合には、通常は加害者の任意保険会社の担当者と示談交渉をすることになるでしょう。

他方、加害者が任意保険の契約をしていない場合には、示談交渉は、直接加害者としなければなりません(※被害者は、治療費などを加害者の自賠責保険会社に直接請求できますが、自賠責保険会社は示談代行をすることはありません。)。
被害者について
また、被害者側としては、被害者が任意保険の契約をしており、交通事故について被害者側にも過失があるような場合であれば、通常は被害者の任意保険会社が示談を代行してくれます。

他方、信号待ちの間にいきなり後方から追突された場合など、被害者に過失がない交通事故の場合、被害者の保険会社は示談の代行ができません。
ですから、その場合には、自身で示談交渉をする又は弁護士に交渉を依頼することになるでしょう。

示談にかかる期間は?

交通事故の示談にかかる期間は、一概には言えません。
例えば、物損のみの場合や、人損であっても比較的軽微なけがで治療も早期に全て終了する、という場合には、1~3ヶ月程度で話合いがまとまることも多いです。

他方、けがが重く治療期間が長くなったり、後遺障害が残るような場合には、損害額が確定するまでに時間がかかりますので、示談をするにも時間ができません。
また、保険会社の提案する金額に納得できず、裁判になれば、最終的な解決までに数年かかるケースもあります。

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示談で解決するまでに時間がかかるケースについて

示談で解決まで時間がかかるケースは、主に次のとおりです。
  • 加害者が任意保険の契約をしていない場合
  • けがの程度が重大な場合
  • 後遺障害等級認定を行う場合
  • 過失割合について合意に至らたない場合
  • 相続人が複数いる場合
順にご説明します。

(1)加害者が任意保険の契約をしていない場合

無保険
加害者が任意保険の契約をしていない場合には、加害者と直接示談交渉をしなければなりません。

加害者が治療費を払ってくれなかったら
どうしたら良いですか?

加害者が自賠責保険に加入していれば、
被害者が直接自賠責保険に請求できますよ。

自賠責保険にすら入っていなかったら
どうしたら良いですか?

「政府保証事業」に請求することができます。
けがの治療費などは自賠責と同じ、120万円まで補填されます。

ただし、自賠責保険や政府の保障事業による賠償額には上限がありますので、後遺障害が残るようなけがをした場合には、補償額が損害額に足りないことも多いです。
ですから、そのような場合には、加害者に直接請求する必要があります。

ですが、当事者同士の話し合いとなると、時として
  • 加害者の加害者意識が低い
  • どうせお金がないと開き直り、交渉に応じない
  • 感情的な言い合いに終始する
ことも多いです。
ですから、加害者が任意保険の契約をしておらず、また、十分な資力もない場合には、示談交渉は長引きます。

加害者が示談交渉に応じず、賠償金を支払わない場合には、
  • 被害者の自動車保険を利用できないか
  • 労災が使えないか
  • 加害者の雇用主に請求できないか(※加害者が勤務中であった場合など)
などを検討することになりますが、どれも難しいようであれば、早急に弁護士に相談することをお勧めします。

(2)けがの程度が重大な場合

けがの程度が重大な場合
加害者と示談をするタイミングについて、特に決まりはないのですが、
示談をするタイミング
に示談交渉を開始することをお勧めします。
というのは、それ以降でなければ、最終的な損害額が確定できないからです。
示談をすると、基本的には示談の内容を否定することはできなくなりますから、最終的な損害が全て出そろい、金額が確定した後に示談をしないと、後々のトラブルのもとになりかねません。

ですから、けがの程度が重大で、なかなか治療が完了しない、又は症状固定とならない場合には、早期に示談で解決することが困難になります。
リハビリが必要になるようなケースでは、交通事故から1年以上経っても示談が成立しないこともよくあります。

任意保険会社としては、被害者に示談をせかすことがあるかもしれませんが、必要な治療が終了していないのに示談に応じる必要はありません。
治療が終了したか、症状が固定したかについては医師としっかり話し合い、しかるべき時に示談の話合いに応じることが必要です。

(3)後遺障害等級認定を受ける場合

後遺障害等級認定の流れ
交通事故にあってけがをして、治療を受けたにも関わらず症状固定後も症状が残ってしまった場合には、後遺障害等級認定を受ける必要があります。
後遺障害等級認定は、被害者本人が直接申請する場合と、加害者の任意保険会社を通じて申請する場合(「事前認定」と言います。)

後遺障害等級認定の申請から認定までは早ければ1ヶ月程度、時間がかかると3ヶ月程度かかることもあります。
また、認定結果に不服があれば、
  • 認定結果に対する異議申立て
  • 自賠責紛争処理機構に対する紛争処理申請
  • 民事裁判での訴訟提起
などを検討することになりますので、更に時間はかかります。

とはいえ、後遺障害等級認定は、「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」を請求するために非常に重要ですので、後遺障害が残っている場合には、必ず申請をする必要があります。

(4)過失割合について合意に至らない場合

過失割合
交通事故が起きた時、事故原因について被害者にも過失(不注意や落ち度です。)がないか検討しなければなりません。

事故が起こった原因や被害が拡大したことについて、被害者にも過失がある場合には、その過失割合に応じて損害賠償額が減額されます(例えば、損害賠償額が1000万円だったとしても、被害者の過失が2割という場合には800万円に減額されます。)。
被害者に過失が一切ないというケースはそれほど多くありません(被害者に過失がないとされるのは、赤信号などで停車中に後方から追突される場合などです。)。

交通事故の過失割合自体は、ある程度類型化されていますので、交通事故が起こった状況について被害者・加害者双方の認識にズレがなければ、その状況に応じた過失が認定され、過失割合についてはそれほど問題にはなりません。
また、当事者の認識にズレがあったとしても、ドライブレコーダーや街のカメラなどで事故状況が特定できる場合にも、過失割合はそれほど問題にはなりません。

問題は、客観的な証拠もなく、目撃者もなく、当事者同士で事故状況の認識が食い違っている場合です。
この場合、交通事故の原因に関する当事者の過失割合について当事者同士でもめることが多いです。
そのような場合には、警察の作成した調書などで事故状況を確認し、当事者同士の認識をすり合わせるなどする必要がありますので、示談交渉について時間がかかります。

(5)相続人が複数いる場合

交通事故にあって被害者が死亡した場合、被害者の損害賠償請求権は相続人が相続します。
相続人が複数いる場合には、それぞれの相続人が、各自の相続分に応じて加害者に損害賠償金を請求することが出来ます。

とは言え、加害者としても、相続人全員とまとめて示談をした方が、個別に対応する手間も省けますし問題を一挙に解決できますので、通常は、相続人全員と示談をすることが多いです。

ですので、相続人が複数いて、相続人間で意見がまとまらない場合や一部の相続人と連絡が取れない場合などは、示談による解決が長引くことがあります。

示談交渉を弁護士に依頼するメリットについて

一人で悩まず、なんでもご相談ください。

保険会社が示談代行できない場合、ご自身で加害者側と示談交渉をすることはもちろん可能ですが、交通事故の示談については弁護士に依頼することをお勧めします。
示談交渉を弁護士に依頼するメリットについてご説明します。

(1)早期に解決できる可能性があること

交通事故の損害賠償請求について加害者側の保険会社と話し合う場合、保険会社の提示する金額に納得して示談をしてしまえば、交渉はすぐに終わります。
ですが、それでは、被害者にとって必ずしも最善の示談になっていないことがあります。
後でご説明しますが、保険会社の提案する金額は、それ以上被害者が請求できない、という金額ではありません。

保険会社は、交渉によってより増額される余地のある金額を、まずは提示することが多いです。
ただ、保険会社というのは、交通事故の示談交渉を仕事にしていますので、交渉の相手方としては、とても手強い相手です。
交通事故の示談交渉の経験がなく、妥当な金額が分からないままに保険会社と交渉しても、相手を説得できません。

一方、弁護士は保険会社と同様に交渉のプロです。
保険会社も弁護士相手だと、被害者にとってそこまで不利な条件を提示してくることは少ないですし、専門的知識もありますので、お互いに話もスムーズに進みます。

そこで、早めに弁護士に相談することで、弁護士が被害者にとって一番いい形での早期の解決を目指すことができます。

(2)最終的に受領する金員が増額する可能性があること

交通事故の被害にあった時、治療費や入院雑費など、実費の賠償項目については加害者との交渉は特に難しくありません。

ですが、弁護士に依頼した場合には、しない場合と比較して最終的に受け取れる金額が増額される可能性があります。
増額される可能性のある項目「慰謝料」です。

交通事故の慰謝料の基準は、自賠責の基準、任意保険会社の基準、弁護士の基準がそれぞれ異なっており、通常は自賠責基準が一番低額で、弁護士の基準が一番高額になります(※ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、ご自身の過失割合が大きい場合(加害者側になってしまった場合など)には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。)。
自賠責の基準
特に後遺障害等級が認定されるようなけがを負った場合には、後遺障害慰謝料の差はとても大きいです。
しかも、その場合には逸失利益も請求できますから、金額が極めて高額になり、保険会社との交渉も難航しがちになります。
任意保険会社の基準は各保険会社によって異なりますし、公表されていませんので、一概にこれとは言えませんが、一般的には自賠責の基準よりは高く、弁護士の基準よりは低くなります。

交通事故の示談を弁護士に依頼した場合、弁護士は、弁護士の基準に近づけるように交渉をします。
他方、ご自身で弁護士の基準を目指して示談をしようとおもっても、なかなか弁護士の基準に近づけないことが多いです。

ですから、弁護士に依頼した場合には、最終的に受け取れる賠償額が増額される可能性があります。

(3)不利な過失割合が割り当てられるリスクを回避できること

過失割合
先ほどご説明したとおり、損害賠償額を確定するには、被害者側の過失を検討する必要があります。
事故状況を特定するための客観的な証拠もなく、目撃者もいない場合、任意保険会社としても、加害者の言い分に沿った形での過失割合を提案せざるを得ないこともあります。

弁護士に依頼した場合には、警察の作成した調書などすべての資料を確認した上で、専門的知識に基づいて被害者側の過失の有無と割合を判断し、過失割合を修正する必要があれば、これを修正した上で加害者と交渉します。


ですから、弁護士に依頼した場合には、被害者に不利な過失割合が割り当てられるリスクを回避できます。

弁護士に依頼するデメリットについて

弁護士に依頼するとデメリットとしては、弁護士に支払う費用がかかるという点があります。
ですが、弁護士費用が心配という方は、まず、契約している保険の特約を確認してみてください。
保険によっては、加害者の保険会社との話合いなどを弁護士に依頼した場合にはその費用を負担するという『弁護士費用特約』が付いていることがあります。

ここでポイントとなるのが、「弁護士費用特約」は自身名義で弁護士費用特約に加入していない場合でも、弁護士費用特約を利用できることがある、という点です。
  1. 配偶者
  2. 同居の親族
  3. ご自身が未婚の場合、別居の両親
  4. 被害事故に遭った車両の所有者
のいずれかが任意保険に弁護士費用特約をつけていれば、被害者ご自身も弁護士費用特約の利用が可能であることが通常です。

弁護士費用特約を使っても、保険料や等級は上がりません。
ただし、自己に重大な過失がある場合など、弁護士費用特約が使えない場合があります。

弁護士費用特約を使うためには様々な条件があり、加入している保険によってその内容も異なります。弁護士費用特約が今回の事件に使えるか、事前に、加入している保険会社に必ず問い合わせしておきましょう。

弁護士費用特約にも限度額はありますが、原則として弁護士費用は保険会社が負担しますので、ぜひ、特約を利用して弁護士に依頼することをお勧めします。

また、弁護士費用特約が利用できないとしても、弁護士が交渉することにより、これまでお話したように、示談金額が増額される可能性があります。

【まとめ】交通事故が示談で解決する前の期間は、けがの程度やなどによって異なるが、弁護士に交渉を依頼すれば、早期に解決できる可能性がある

今回の記事のまとめは次のとおりです。
  • 示談交渉とは、交通事故の損害賠償額を加害者側と被害者側で話し合うことによって解決することで、車両の事故の場合には、双方の保険会社同士で示談交渉をすることが多い。
  • 示談交渉に必要な期間は、けがの程度などで変わるが、訴訟などをする場合には1年以上かかることもある。
  • 相手が任意保険に加入していない、けがが重大、後遺障害等級認定を受ける、過失割合の話がまとまらないなどの場合には、解決まで時間がかかる。
  • 弁護士に示談交渉を依頼すると、自分で示談交渉をするより、
  1. 早期解決が期待できる
  2. 最終的に受領できる金員が増額する可能性がある
  3. 不当な過失割合が割り当てられるリスクを回避できる
というメリットがある。

アディーレ法律事務所のホームページでは、これまでに解決した事例をご紹介し ていますので、是非ご参照ください。
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この記事の監修弁護士

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

中西 博亮の顔写真
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